【レビュー】ワイヤレスヘッドホン 5種を実比較

外でも良い音で音楽を楽しみたい!

そんな市場の動きに推されて、高級ポータブルオーディオの市場も賑わってきています。
特に、最近はイヤホンとヘッドホンの市場が活況です。
というのも、Bluetoothのプロトコルの性能が上がり、情報量としては有線と遜色無いレベルに達してきているからです。

そのような状況であるため、自分としても有線でも無線でもいけるワイヤレスヘッドホンについて特に興味があり、どれを選ぶか非常に悩ましく感じていました。

ところが、Web上を探してみても、ワイヤレスヘッドホンについては、複数の製品を比較視聴しているサイトが多くありません。そこで、「気に入らなかったら、オークションなりフリマで売ればいいや」の精神で、気になるモデルを全て買い集めて、比較をしてみました。

同じような悩みを抱える同志のお役に立てればと思います。


購入・比較したヘッドホン

今回、比較対象とするのは下記の5モデルです。
 Libratone Q ADAPT ON-EAR
 Bang&Olufsen Beoplay H8
 SENNHEISER Momentum Wireless M2 AEBT
 Bowers&Wilkins PX
 Parrot Zik3

視聴にあたり

今回のレビューでは有線接続で比較を行います。

プレーヤー:Opus #1s
ケーブル:オヤイデHPSC-35/2.5
※Momentumのみ2.5mmプラグのため、純正ケーブルを使用。

視聴した曲
It’s You / Joyce Cooling (Jazz)
Breeze Brass Band / Orient Express (Brass Band)
Summer Rain / Triosence (Jazz)
Because of You / Ne-Yo (Soul)
・Erlkonig (Schubert) / Insura Orchestra (Classic)

ただし、特徴を掴むことを目的に視聴したため、これ以外の楽曲もリスニングしています。


Libratone Q ADAPT ON-EAR

音に生命力があり、ボーカルが生き生きと表現されます。
とても素直な音です。

特に、中音域を中心に耳元へ音が伸びてくるのが気持ち良く、ボーカル曲やジャズ(ソロ、デュオ、トリオなど)、1つ1つの音の存在感を求める曲を力強く鳴らしてくれます。

一方、オンイヤータイプであることもあり、オーバーイヤータイプと比べると音場は広くありません。そのため、クラシックやブラスバンドを聴くと、息苦しい印象になります。音場が欲しい曲には向いていません。

解像感は高くなく、甘めの味付けで味わいを持たせています。
艶は今回のヘッドホンの中でも随一で、好きな歌を聴き込むには最高。
このヘッドホンでの、Janet Jacksonにはうっとりします。

ちなみに光っているロゴは設定で消せます。

Libratone Q ADAPT ON-EAR

Libratoneはデンマークのメーカー。
後述のB&Oもデンマーク。どちらのメーカーも音作りは自分好みです。
自宅のピュアオーディオも、同じデンマークのdynaudioでした。

 

Bang&Olufsen Beoplay H8

Q ADAPTは音源が耳元にあるような躍動感がありました。それと比較して、H8はリスナーとの間に適度な距離があります。これは決して悪い意味ではなく、定位の良さや、楽器と楽器の距離感が良いことに寄与しています。

音楽の輪郭が明瞭でわかりやすいと感じました。
一般的に、こうした音の明瞭性は、上位モデルになればなるほど優れていく点です。そうした意味でQ ADAPTとH8の価格差も感じます。

音は個人の好みに大きく左右されますので、私の”良い”は誰かの”良い”には必ずしもなりません。
例えば、Joyce Coolingを聴くと、音楽の躍動感にはQ ADAPTが優れ、本機ではギターやボーカルの粒立ちに優れます。ボーカルを聴きたいのか、バンド全体を聴きたいのかで好みが分かれるところです。私はこの2機では、Q ADAPTの音作りが好きです。

まとめると、H8は上から下まで音のバランスがよく、低域の端切れも必要十分です。ボーカルからクラシックまでジャンルを選ばず鳴らせます。
絶妙な音作りをしているなと感心しました。さすがB&Oというところでしょうか。この小型のハウジングでこれだけ鳴らせるのは、素晴らしいと思います。

見た目もスマートで、高級感があります。

Bang&Olufsen Beoplay H8i
※視聴モデルのH8は生産終了しており、後継はH8iとなります。

Bang&Olufsenは、デンマークの老舗メーカー。
全てにおいて、デザイン性に優れた製品作りを心がけており、 デザイナーJacob Jensenの名前を知ったのもこのメーカーから。

このヘッドホンの質感も素晴らしいの一言です。

 

Parrot Zik3

ここからは、オーバーイヤータイプ。
一回り大きくなりますが、その分音にゆとりがあります。

Beoplay H8より、さらに解像度と音場が高まります。
音の見通しの良さが印象的。黎明の湖面の静けさのよう。
すぅっと音が消えていくイメージ。 艶やかで美しい。

Classicと相性が良いと感じました。
しかし、とても繊細な音に対して、朝霧が掛かったような鳴り方をするため、生々しい音が欲しいRockやFunkには向きません。
また、アンプの駆動力が求められるところがあり、低価格帯のDAPやスマホ直挿しでは力不足になるようにも思います。

音はフラットなので、聴き込むには向きません。
聴き疲れしないため、寝る前に聴くならこのヘッドホンです。

Parrot Zik3

Parrotはフランスのメーカーです。
ドローンメーカーとして知られており、正直、オーディオメーカーとしてのイメージはありませんでした。

そのParrotが市場参入する際に用意した武器が Zikシリーズです。
ドンシャリを避けた、誤魔化しの効かない音作りにこだわりを感じます。

デザインは、今回のモデルの中で最も優美です。

 

Bowers&Wilkins PX

私のようなピュアオーディオもやる者にしてみると、B&Wなんて言ったら、ハイエンドオーディオの雄で、その解像感溢れる音のなかに主役を際立たせる音楽性に目を輝かせたものです。それで、そのB&Wのヘッドホンなんて言ったら、もう期待をせざるを得ません。

音のつくりは、Zik3と対象的。
PXは音楽的な楽しさに溢れたモデルです。

具体的には音がキラキラと輝く。朝露が輝くような生き生きとした元気の良い音が出てきます。
Zik3を夜に聴くヘッドホンとするならば、こちらは起きがけに聴くヘッドホン。

わかりやすい音作りで、聴き込むにも、さっと聴くのにも、とても良いヘッドホンなのですが、そのキャラクターの強さの代償として、長時間のリスニングには向きません。2時間聴いたら、きっと耳が疲れるから(笑

今回のヘッドホンから2本を選べと言われたら、手に取っていると思います。

なお、本モデルのみ、有線接続の場合でもヘッドホン側の電源ONが必要という謎仕様です。

Bowers&Wilkins PX

B&Wはイギリスの老舗オーディオメーカー。
805 という名機があり、私ら庶民でも頑張れば買えるところの最高峰のスピーカー。その音は解像度が高く、定位に優れます。

PXは、B&Wが初めてワイヤレスヘッドホンに意欲的に取り組んだモデル。
この前モデルにP5 Wireless、P7 Wirelessという有線版ヘッドホンを無線化したモデルがあり、後継モデルには PX5、PX7というモデルがあります。


SENNHEISER Momentum Wireless M2 AEBT

ドイツの老舗SENNHEISERからの傑作ヘッドホン。

SENNHEISERといったら、開放型のHD650やHD800が有名ですが、Momentumは密閉型の雄です。

私としては、ポータブルとして許せるサイズ感はここまでです。
折り畳みできるため、バッグにはコンパクトに収まります。

バランスを取った音作りをしていますが、低域が豊かになるのが特徴です。
ブラスバンドを聴いた時の臨場感は印象的でした。
また、聴き疲れすることもないため、良く持ち出すモデルです。

SENNHEISERのヘッドホンは、ノイズキャンセリング(NC)の効果が弱いことで有名ですが、本機のNCもとても弱く、ノイズを消しきれません。
強いNCは音楽のバランスが崩れるため、音質とNCのバランスを取っていると表現されることもありますが、おそらくターゲットとしている環境を単純な屋外としているだけな気がします。
電車や飛行機のノイズに対しては力不足ですので、NCに大きな期待はされない方が無難です。

なお、今回紹介したモデルでは、NCが強い順に下記のとおりです。
PX > Q ADAPT > Zik3 > H8 > Momentum

SENNHEISER Momentum Wireless
※視聴モデルのM2 AEBTは生産終了しており、後継はM3 AEBTとなります。

SENNHEISERはドイツが誇るオーディオブランドの1つ。
ヘッドホン、イヤホンだけではなく、マイクなどの音響機材を含め、幅広く優れた製品を生み出し続けています。

今回レビューしたMomentumは、SENNHEISERとしてはポータブル用途の最高峰として位置付けしているシリーズで、リファレンスとして良く名前が聞かれます。現在販売されているのは後継モデルで、ワイヤレス接続向けに性能の向上が図られています。

 

感じたこと

今回、有線で5機種を聴き比べ致しましたが、合わせて無線でも聴き比べをしておりました。感じたのはモデルによってBluetooth接続での視聴をメインとするのか、有線接続での視聴をメインとするのか、コンセプトの差があることです。

例えば、PXについては、前のモデルのP7 Wirelessに比べると、有線接続時は明らかに音質の低下を感じましたが、Bluetoothで視聴する場合にはバランスが取れた音となります。
これは、最初からヘッドホン側のアンプに合わせ込んだ音の設計をしているためで、有線接続は緊急避難用と割り切っているためだと考えられます。

同じように Momentumの第3世代モデル(今回のレビュー対象は、第2世代モデル)も有線接続時はボコボコの低音が目立ち、退化したと感じる一方で、Bluetooth接続時の音のクオリティは第2世代に比べると非常によく仕上がっていると感じました。

今回視聴した世代のワイヤレスヘッドホンは、そんな市場の移行期にリリースされたモデルが中心となっていて、「良い音で音楽を聴きたい」というニーズは共通しているものの、想定している利用場所として「モバイルで」「自宅で」というマーケティング戦略が分かれ始めたことが感じられ、興味深く思いました。

そうすると、これからの時代、DAPに接続して聴きたい場合にはBluetooth接続がないモデルから検討するということが当たり前になるのかもしれません。

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